Q&A: 大人向けピアノコンクールの良い点、悪い点は?
19年01月
Q: 大人向けピアノコンクールの良い点、悪い点について、率直にお答えください
今、大人からピアノを始める初心者が増えています。それに合わせるように、大人向けのピアノコンクールも登場しています。それらを利用されているピアノの先生方も、多くいらっしゃると思います。実際にそのような大人向けピアノコンクールに大人の生徒さんを参加させている、もしくはあえて参加させない立場から、その良い点、悪い点について率直にお聞かせください。
A:ピアノの先生の回答
(先生のそれぞれの立場とタイプから回答)
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フクロウ・タイプ (学問的、または知恵ある意見を述べたい先生の立場からの意見 |
アリア-aria-ピアノ教室 仙台 青葉区、太白区
大人のコンクールとあえて仕切っているものは、アマチュアとされるものがメインになるかと思います。
度胸試しや、ステージの場数を踏むという体験を得られることはとても良いことだと思います。
ただ、現状、アマチュアとして明確に線引きしているものは多くなく、実際はなぜか音大卒の方々の温床になっているというか、本当に大人になってから地道に取り組んでいるような人たちにとっては、厳しいものが多くなるのが実情かなと。
その点を明確化または細分化することで、もう少し情熱あるコンクールが増え、選択肢も広がるのではないかと考えています。
私どもではその類のような催しには参加していません。
別に反対ではありませんが、今のところ対象者がいないのです。
ご参考までに大人のコンクールはどのようなものが現在開催されているかお教えいただきたいです。
気楽に参加できるもの、プロ級のもの、いろいろあると思います。
励みになるようなものであればそれを打ち出して大人のレッスン生を募集するのもいいかもしれません。
廣岡ピアノ教室
ペース・メソッド研究会コンサルタント 廣岡文子
こんにちは!埼玉県のウィステリア・ピアノクラスです。
現在、当教室に通ってきていらっしゃる成人の生徒さんに、「大人のコンクールに対してどう思うか」聞いてみました。
すると、「客席の方々や審査員の先生だけに聴いていただけるだけでなく、他の参加者と交流が持てることは掛け替えのない機会。」「一つの楽器に対して真摯に取り組んでいることの証の場であり、その価値は計り知れない。」といったポジティブなご意見が殆どでした。
参加者同士が、「来年もまた会おうね!」「これからもピアノを頑張ろうね!」といったコミュニケーションが生れるコンクールもあり、どうしても音楽的に孤立しがちな大人の生徒さんにとって、コンクールは、同じ音楽を目指すアマチュアとして、大変有意義なものであるようです。
しかしながら、コンクールにはその性質上、どうしても「予選落ち」「本選通過」「入選」「優勝」といった結果が付随してきます。
それについても聞いてみましたところ、一人の生徒さんは次のようにお答えになりました。
「もし一次予選で落ちたとしたら、やはり落ち込むと思います。しかし、得られるものの大きさと比較すると、そんな一時の感情は取るに足りません。」
また、当教室には、隣市から片道90分かけて、電動車椅子で通っている障がいを持つ生徒さんがいらっしゃいます。この方は、10年以上もの寝たきり生活を経て、身体が不自由になってから、人生を見つめ直す中で、「音楽が人に生きる希望を与えるものであることを見出した。」と仰有っています。
他の楽器も演奏なさる方なのですが、「ピアノは身体が不自由な人にとって優しい楽器だから、一番好きです。」とのことでした。
その理由は、「他の楽器は、演奏会場まで自分で運ばなければならない。それは、身体が不自由になってしまった自分には困難である。しかし、楽器を運べなくとも、会場に行きさえすれば、そこにピアノがある。そのことがどんなに嬉しいかは、言葉では言い尽くせない。」とのことでした。
しかも、コンクールで使用される楽器は、高品質のグランドピアノであることが殆どです。「スタインウェイ」や「ベーゼンドルファー」のフルコンサートグランドを、一流の音響設備の整ったホールで演奏することが出来るという特権の大きさを認識し、享受することが出来る方であれば、是非ともその醍醐味を味わって欲しいと思います。
大人のコンクールにおいては、「参加者自身が納得できる音楽を追求する場であること」および「ライバルは自分であること」が、本質になってきます。
ピアノを一生続けていきたいと願っていらっしゃる成人の生徒さんには、積極的に参加をお勧めしたいと思っております。
もちろん、ステージに立つことよりも、ご家庭で演奏することを楽しまれている方もいらっしゃいますので、参加するしないは、人それぞれです。それについては、ご自由にお考えになられたら良いですね。
成人の生徒さんにおかれましては、一番自分に合った方法でピアノと関わっていく中で、「音楽というものが、いかに人生を豊かにするものであるか」を、深く知っていただきたく思っております。
成人の方を対象にしたコンクールが、「自己実現の手助けの一端を担うこと」を願って止みません。
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ウサギ・タイプ (楽しい雰囲気を大切にする先生からの意見) |
参加させていません。
そもそも。音楽を競うこと自体おかしいと常々思っています。
楽しむためにレッスンしていますから。
結論から申しますと、コンクール自体は良いとも悪いとも思いません。「競技音楽」という世界にあこがれを感じるかたもいらっしゃいますし、プレッシャーなく演奏したい方もいらっしゃいます。参加したい大人の生徒がいるのであればぜひ利用すべきだとおもいます。ただ当方が考える「音楽」は順位で良し悪しを決めるものではなく、その演奏者の表現を認め合うものだとおもいます。一定の技術ありきの話であるのは確かですが、「己を試したい!」という意気込みとしてのコンクールは有意義なものであり、先生からのプレッシャーとしての出場は当教室で考えるところ少し疑問が残ります。
ただ、出場することは大変意味のあることであり、決して無駄なものではないとおもいますので、表現の高見を目指すことはアマチュアという方であってもがプロだろうが技術向上のためのステップですので良いともいます。
ピアノや音楽が嫌いになってしまわないレベルでの参加が一番でしょうか(笑
実際に参加された大人の方は当教室にはいらっしゃいませんのでどのようなものかわからないまま回答しております。
たくさんの先生方のご意見もあることかと存じますので
「無理のない範囲での参加、先生や教室からのプレッシャーには疑問」というあいまいな回答といたします。
ここ数年、本当にコンクールの種類が増えていますね。
大人になってピアノを始められた方は、「楽しさ」が感じられるコンクールなら、参加するのはよいことだと思います。けれど私はそういうコンクールでも、ご本人の意志を尊重して、ご希望がなければ無理に参加をお勧めするようなことはありません。なぜなら優劣がはっきり出る厳格なコンクールは、大人の初心者の生徒さんには向かないと思うからです。何より、趣味の楽しみを求めてピアノを始めた方たちですから、ピアノのうまさで表彰されたいという欲求自体が皆さんそれほど強くないという事情もあります。しかし最近は「楽しさ」を追求したコンクールも増えてきているようですから、この傾向が続くことは望んでいます。例えばコンクールが1部で、2部は他の楽器の方との簡単な合奏を体験できるコンクールなどができたら、良い経験にもなり、素敵なのでは思います。このような、初心者の方でも「楽しめる」コンクールがこれから増えることを希望しています。
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ネコ・タイプ (独自の意見を言いたい先生の立場からの意見) |
中澤阿佐子
大人のコンクールは参加しています。
全面的に肯定的です。
なぜなら、生徒さん自身が選択されたことだからです。
結果は様々でも、皆さん真剣に取り組まれ とても勉強になったと
活力にされています。
どのような事でも、自分からやってみたいと思ったことは、プラスになると信じています。
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ウシ・タイプ (目標に向かって地道な努力が大切と考える先生の立場からの意見) |
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犬・タイプ (真面目で親しみやすい先生からの意見) |
生徒を大人向けコンクールの出場のお手伝いをした経験あります。結果の捉え方は生徒により異なります。しかしどの生徒もコンクールに向けて多様な捉え方で努力してる様に見受けられますので、出場希望の生徒には意向に沿ったレッスンをしています。悪い点は大人なので難しい曲を短時間で仕上げ様としてしまいますがなかなか進まないのが現実で、聴かせる演奏と言うより自己満足な演奏になりがちだと思います。
大人向けのピアノコンクールは、子供以上にレベルの差が大きいと思います。
音大には行かなかったけれど、プロ並みの実力の方もいれば、大人になってからピアノを習い始めて上達した方など。
何れのレベルにしろ、コンクールという目標に向かって練習するのは、とても意味があると思います。
ただしレベル分けがとても難しいですね。
指導者がその大人の生徒さんに合ったレベルのコンクールを紹介すれば、良いのではないでしょうか?
その為には、常にアンテナを張って情報を仕入れられる状態でいるべきだと思います。
やまもとピアノ教室
山本 理紗
当教室にも、大人の生徒さんが何名か通ってくださっていますが、コンクールに参加している方はいらっしゃいません。
現在はスケジュール上の都合で参加される方がいない状態ですが、希望される方がいれば、ぜひコンクールに参加していただきたいと考えています。
大人向けピアノコンクールの良い点としては、目標を設定しその達成に向けて努力を重ねることで、ピアノへの意識が高まり、ゴールから逆算をして練習に取り組むことができる点です。
大人の方は趣味や習い事のひとつとしてピアノを選んで来てくださいます。そのため、あえて大変な思いをしてコンクールに参加する必要は本来無いと言えます。しかし、たとえ趣味の一環であっても、何か目的や目標を持って取り組むことで、仕事とは異なる達成感や喜びを感じ、ピアノがより人生に深みを与えてくれるものになると考えます。
悪い点は、時間を作るのが難しいということです。
子どもの生徒さんと異なり、大人の方はお仕事などスケジュールが忙しく、例えば平日休みの方などは土日に開催されるコンクールに参加しづらい、といったデメリットがあります。
また、大人の方の場合は、子どもの生徒さんと異なり「コンクールに出ても、結果が悪かったら恥ずかしいし先生に悪いな」と考える方も少なからずいらっしゃるため、興味はあっても参加しないというケースもあるかと思います。
大人の生徒さんには、ご自身の目標・弾きたい曲などご希望に沿ったレッスンをしています。その中で、ステージ経験や楽しみも含めてコンクールをお勧めすることがあります。お仕事と並行しての練習は大変ですが、今まで参加された生徒さんは、実力も上がり、曲に思いを込めて演奏ができ、良い経験ができたと概ね好評です。入賞ができた時は嬉しさもひとしおで、弾きたい曲も増えてモチベーションを上げることにも効果的だと思います。
短所としては、大人のコンクール、アマチュア部門などでも、テクニックに差があり、励みになると思って参加したものの、かえって力不足だと感じてしまいモチベーションを下げかねないところかと思います。しかし、自由曲ですと選曲でカバーできる点ですし、これまでに接した大人の生徒さんの感触では、短所より長所の方が遥かに多いと考えています。
梶本音楽教室(梶本有紀)
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クマ・タイプ (母性的、甘えさせてくれそうな先生の立場からの意見) |
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シマウマ・タイプ (優雅さと優美さをもって指導したいと考える先生の意見) |
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キリン・タイプ (のんびりした先生からの意見) |
大人の方の日頃の練習より明確な目標があるとがんばれる方には、おススメかなぁと思います
(中高年の世代へ対して)
プレッシャーに弱い方にはあまりオススメしてないです
練習して行く事が楽しめなくなってしまうからです
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馬・タイプ (活動的で、パワーを与えてくれそうな先生からの意見) |
大人向けのコンクール参加の良い点は、やはりモチベーションの維持と演奏能力の向上です。
目標に向かって努力することで、見違えるほどの成長を遂げられる方が多いです。
その一方で、コンクール体験がトラウマになってしまうことがあります。
舞台経験を積まないままコンクールに参加されると、極度の緊張から、全く実力を発揮できないことがあり、その苦い経験から、コンクールへのチャレンジも諦めてしまう残念なパターンです。
また、子どもの頃に本格的にピアノを習っていた方が参加されることが多く、大人になってから始められた方はレベルの差に自信をなくしてしまわれる方もいます。
参加するコンクールのレベルを先生と生徒さんの双方で吟味し、先生の前後のフォローがしっかりなされていると、コンクールへのチャレンジは意味のあるものになってきます。
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羊・タイプ (平和的でおとなしめの先生の意見) |
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ライオン・タイプ ( 権威的、きびしい先生の立場からの意見) |
その他・タイプ (その他の考え方とタイプの先生)
保護者の皆さんの中には例えばゴルフ、テニスその他様々なご趣味をお持ちの方がいらっしゃるかと思います。
それらほとんど全てのものに試合、コンペティションなどのイベントがあります。最近はカラオケでさえ点数を競ったりしています。
また、お料理上手な方の中にはSNSにアップするなどの発信をされています。そこはきっと情報交換の場であり、切磋琢磨していこうとする行動だと捉えております。
コンクールに否定的な方がまずおっしゃるのは「プロになるわけではない」「賞が取れなかったら可哀相」
ですが、スポ少も部活も試合があり、囲碁・将棋はたまたカルタに至るまで大会があります。そのうち大多数はプロを目指すわけではないですよね。テレビで放映される一握りを除いてみんな負けたり、悔しい思いをしたりして成長しています。
勝てなかったことを蔑むのでなく、勝っている人がどれだけ練習しているのかを話し合うチャンスでもあります。
同じノリでコンクールもいいことなのでは?と思います。
とはいえ参加費が高額ですよね。なので私もご案内までしかしていません。あくまでも自由意志です。参加して賞を取れた生徒さん、予選落ちしてしまった生徒さん、と時には非情な部分もありますが、何年めかで入賞した生徒さんは一回りも二回りも大きくなったと感じます。
ただ、コンクール食わず嫌いの方に敢えて申し上げたいのは、「音楽を習う」という行為が、教養とかたしなみとかそういうことではなく、「誰かに聴かせたい」「弾いてプレゼントしたい」のようなコミュニケーションツールのひとつであって欲しいのです。
その手段のひとつとして何らかのステージを与えてあげることは決して無駄ではないと信じています。
わたなべピアノ&ソルフェージュ教室 渡部昌美