【うまく弾けちゃうアドバイス】 メルマガ・バックナンバー 08年9月7日

好きで選んだはずのこのピアノ曲、だけど・・・ ~気分と選曲の関係~



■今日のメルマガ執筆者

ピュア・ミュージックスクール』  [千葉県千葉市]


こんにちは。
ピュア・ミュージックスクールの加藤です。


「好きな曲を弾いているはずなのに、最近、楽しいとおもわない。というより、むしろピアノがだんだん嫌いになっていくようなかんじ・・・」


あなたは、こんな経験をしたことはありませんか?
ピアノをしばらく習っていると、まあ、思いもかけないことが、いろいろあるものです。

・いくら以前からモーツアルトが好きだからといっても、最近は気分がのらず、むしろ弾いているとイライラしてくる。技術的な問題が壁になっているわけでもないのに・・・


・今の曲に完全に飽きてしまった・・・というわけでもないが、楽しく感じない。


こんなこと、実際、ある話です。

よくよく考えてみれば、人間とは心と体が複雑にからみあった不思議ないきもの。いつも合理的に動いたり感じたりするわけではないので、ある意味しかたがないのでしょう。

どうしても、そのときの心や感情に左右されてしまう。


しかし、そこは、ピアノ教師としての責任とプライドがあります。
「しかたがない」の一言で、片付けられるわけもありません。


目の前に、そのことで悩んでいいて、今にもピアノ・レッスンを辞めてしまいそうな生徒さんがいる。
そんな悩める生徒を目の前にして、何もしないわけにはいきません。



きょうは、こういった「気分と選曲」の問題と解決法ついて、わたしの生徒さんの実例をとおして少しお話したいとおもいます。



40代の女性で、Aさん。
ピアノ弾き語りのレッスンをしています。


家事や子育ての真最中の方です。
音楽は好きで、カラオケも歌います。


子供の頃、ツェルニー30番の途中までレッスンしたと言うことで、当スクールに通い始めました。

一曲ずつ、ていねいにこなしていく方です。

途中で曲を変えるのはイヤだとのこと。

講師の私のほうが飽きてしまうほど・・・一途です。


おそらく、お父様の映画好きが影響したのでしょう、スクリーンミュージックがお好きだとかんじました。


あるときから、あのイタリア映画の名作で、戦争で引き裂かれた夫婦の悲哀を描く「ひまわり」のメインテーマの練習に入りました。


ところが・・・
だいぶ仕上がってがってきた、ある日のレッスンのこと。


「もう煮詰まってしまって、楽しくないのです」

「この曲、嫌い」

「今後のレッスンも続けるかどうか、迷っている」


こうやって、ご自分の気持ちを吐き出し始めたのです。

それはそれは、いままでには考えられないような落ち込みようでした・・・


しかし、本当は「ひまわり」が嫌いじゃない。
ピアノがめんどくさいのではない、飽きたわけでもないのです。


直感的に、最近の気分と曲想がかみ合わないのでは・・・とわたしは考え、もう1曲だけレッスンに追加する事を提案しました。


Aさんのお好きな曲の中から「モア」を選曲。
これは、60年代のイタリア映画「『世界残酷物語』のテーマで、美しい曲です。


ちょっと派手な8ビートにアレンジして、レッスンを始めました。リズムのノリが気に入ってくれたらしく、2ヶ月近くはこの曲のレッスンだけでした。

その間は、「ひまわり」はレッスンからはずしていました。


そして、2ヶ月過ぎたある日、Aさんはこうおっしゃるのです。


「もう一度『ひまわり』を弾き語りしてみたい」


しばらく時間をおいた後の、この曲の表現力は、じつに見事でした!
この2ヶ月で驚くべき進歩をみせたのです。



以上のことから、わたしなりに考察したことをまとめてみましょう。


【現状認識と問題点】


・Aさんは、過去のレッスンの様子から2ヶ月で曲が飽きる方ではなく、「ひまわり」の難易度も適切だった。


・曲に飽きてしまったことも考えられたが、それ以上のなにか「なげやりさ」を感じた。(後に、その当時はプライベートでイライラすることが多かったと、告白してくれた)
その時の「気分」が、楽曲の素材とは関係なく、ピアノレッスンに悪影響を及ぼしていた。



【解決と方法】


1)音楽を楽しめるような工夫が必要と判断。
難易度を下げることはせず、曲想をガラッと変えたほうが効果的と判断。Aさんはリズミカルな曲も好きだったため、新しいビート感を体験してもらおうと、これまでとは違うおもいきった選曲を行う。


2)Aさんの状態 <気分がイライラして、高揚していた状態。>
提案 ⇒ ゆったりとした感傷的な曲「ひまわり」を取りやめ、Aさんにとって少し激しく感じる8ビート編曲の曲「モア」。


3)気分が落ちいた頃
提案 ⇒ Aさんにとって少し激しく感じる8ビートを変更。Aさんにとってゆったりと感じる感傷的な曲にチェンジ「ひまわり」

このように、Aさんの場合、おもいきって曲調やリズムを変えたことが、功を奏したとおもいます。


つまり、Aさんの今の気分や感情を中心にレッスンを構成しなおし、それにそった選曲をおこなった、ということです。


ピアノレッスンでの「気分と選曲」の問題。
こういった課題をつきつけられたとき、いつもおもいます。


「わたしのピアノ講師としての判断力と力量を、今問われているのだ」と。


もちろん、Aさんの選曲パターンがすべての同様のケースにおいて、あてはまるわけではありません。

そもそも、どうしようもなくピアノから離れたくなってしまっているなら、レッスンを一時中断する、という判断も可能性としてはあるでしょう。


つまり、ピアノ講師として大切なことは、ケースバイケースで対応できる、柔軟性です


そして、もう1つ大切なのが、生徒さんとのコミュニケーションです。


「先生の指導方針」は、当然ながらあります。

しかし、生徒の側にも主張はあります。

「楽しむこと優先!」あるいは「上達すること優先」「ピアノは趣味なので、仕事優先」
様々な主張・思いがあります。


こういったことから、日々のレッスンでは、先生の意見と対立する場面もあるでしょう。
だからこそ、ピアノ講師のコミュニケーション力が、とても大切になってきます。


一見やる気のなさそうな生徒に対して、のっけから次のような言葉をあびせる。


「そんなにやる気がないのなら、辞めなさい!」


あるいは、生徒の意見に耳を傾けず、一方的に先生の側の意見をおしつける。

そういったコミュニケーションを無視したやり方は、音楽療法士でもあるわたしには、ご法度なのです。


もし、曲や技術に関係なく、あなたの今の気分が影響して、


「今弾いている曲が、どうにも続けられそうにない」


そういった気持ちになったら・・・


担当のピアノの先生に、そのことを率直に話してみましょう。
今の気持ち、不安、いきづまりについて。


優れたピアノ講師であれば、まずはあなたの意見を受け入れ、積極的にあなたの相談にのってくれるでしょう。そして、そのあと、様々な提案をしてくれるはずです。


観察力と感受性の鋭い先生なら、あなたのほうから話をもちかけなくとも、そのことを察知して先に声をかけてくれるでしょう。


「わたし、悩んでます」オーラを、まず、しっかりだしてみる。

ガマンして1人で悩むのではなく、率直にそれを表現することで道が開けます。



偉大な学者は、仕事や研究にいきづまったときは、散歩にでかけたり、まったく別のプロジェクトなり仕事・研究なりに積極的にかかわろうとするようです。

それは、「今の課題の軌道線上では、これ以上答えが見つからない」と、直感的に判断しているからなのです。


こ れは、音楽や曲についての課題についても、あてはまりそうです。


今回わたしが取り上げた「気分と選曲」の事例。

同様の問題を抱える方の、なにかヒントになればうれしくおもいます。

そして、今の悩みの軌道線上から離脱できることを、願ってやみません。

 

 



ピュア・ミュージックスクール』  [千葉県千葉市]

 




<<前の記事 次の記事>>
バックナンバー一覧


メルマガ登録・解除 ID: 0000252224
人気ピアノ講師たちの【うまく弾けちゃうアドバイス】
   
バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ

---------------------------------------------------------------------



■ピアノ講師への質問

ピアノやレッスンにかんして疑問・質問があれば、ぜひピアノ教室.netの登録講師に質問してみてください。
読者のみなさんに参考になるご質問に関しては、ピアノ講師より回答し、メルマガ上で公開いたします。

具体的なご質問、どしどし、お寄せくださいませ。
お待ちしております。
質問・疑問はこちらのフォームから。


■執筆者への感想・メッセージ

感想・メッセージは、こちらのフォームから。
「~さんのメルマガ記事感想」と題して、記事の執筆者名を明記してお送りください。
いただいた感想は必ず執筆者までお届けします。
ただし、執筆者からのご返信は確約できかねますので、その点、どうぞご了承ください。

執筆者も、感想を楽しみにしていますので、どしどしお待ちしております。


---------------------------------------------------------------------

■ 
□■ 好みのピアノ教室が選べます。

好みのピアノ教室を選べるサイト


---------------------------------------------------------------------

■ 
□■ ピアノ調律師は、もう自分で選ぶ時代です。 

好みのピアノ調律師を選べるサイト

 

----------------------------------------------------------------------
メールマガジン 【うまく弾けちゃうアドバイス】
----------------------------------------------------------------------
□ 発行 : ピアノ教室.net 
□ 編集 : 新井将之
□ ウェブサイト : 「ピアノ教室.net」 
□ 配信期間 : 不定期
□ 社内・友人など転送はご自由です。
□ ご意見・ご感想はこちらからお願い致します!

----------------------------------------------------------------------
     Copyright (c) 2008 ピアノ教室.net. All rights reserved. 
----------------------------------------------------------------------