【うまく弾けちゃうアドバイス】 メルマガ・バックナンバー 10年9月
■今回のメルマガ執筆者
『ピアノとうた・ソルフェージュ』
[神奈川県横浜市都筑区]
こんにちは。 「ピアノとうた・ソルフェージュ」 こばやしです。 |
きょうは、ピアノ初心者によくありがちな指づかいの軽視についてお話してみたいとおもいます。
いきなり結論めいた話になりますが、ピアノの上達において、初心者がおもっている以上に、指づかいは重要だと私は考えているのです。
ここで言いたいのは、初見演奏など音だけに集中しなくてはいけないシチュエーションではなく、通常レッスンで行われている「弾きたい曲をある期間かけて練習する」場合についてです。
指づかいを意識した練習は、とても効率的です。
逆にいえば、楽譜の音符だけに目を奪われ、指使いなんてなんでもいいといったような態度でピアノの練習をつづけることは、とんでもなく非効率なんです。
指使いなんて、すごく細かいことをいわれるようだし、面倒なことをいわれると感じるピアノ初心者も多いかもしれません。譜面を読んでいくだけでも精一杯で、自分にはそんな余裕はないと。
しかし、それでもあえて指使いに注意を払ってほしい。
最初だからこそ、肝心。
そこを、わたしは強調したいのです。
私の中学時代の話になりますが、当時習っていたピアノの先生は、身長が170センチ以上で手も大きな人でした。
でも、先生が指示する指づかいで、弾きづらい場面が多々あったのです。
今おもいかえすと、私の指に合わない運指だった可能性が高い・・・
ちなみに私の身長は155センチ。
ですから、練習がすごく苦痛になりました。苦痛と思うと、練習も遅々としてすすみませんでした。
こんなわたし自身の経験から、現在わたしが受け持っている生徒さんには、自分に合った指づかいを見つけられるよう、常に考えて指導しています。
その方法ですが、まず最初は、楽譜の指づかいに従ってみると良いと思います。
それは、理にかなったひとつの解法だからです。
だから、それに従う。
もし、いきなり自分で適当に指づかいを決めることから入ってしまったとしたらどうなるでしょうか。
その人それぞれに、自分の自由が利きやすい指(123など力が入りやすい指)ばかり使いがちになります。とくに、ピアノ初心者はそうなりがちです。
でも、それは客観的にみれば、しばしば不合理な指づかいになっています。
理屈に合わない指で弾くのは、効果的とは言えません。
そして、自分流で一度覚えてしまうと、なかなか変えるのが大変ですから厄介です。
そうではなく、まずは楽譜の指示にしたがってみる。
だけど、それがどうしても自分にしっくりこないときは、今習っているピアノの先生と相談しながら、自分の弾きやすい指づかいをいっしょに探してもらいます。
先生に相談することで、同時にあなたにとっていちばん合理的な指づかいを発見できるでしょう。
ここまでが、指づかいを身に着ける態度として、基本になります。では、どうしてこういった態度で臨むことが、ピアノの上達において効率的なのでしょうか。
それは、あるフレーズにおいて指の動きの「型」が生まれるからなんです。
「型」といえば、空手や歌舞伎を思い浮かべる人もいるとおもいます。ここでいう「型」は、それとほぼ同じような意味です。
空手などの連続する動作を見ていると、なにか流れを感じますね?達人のそれを見ていると、とても心地よく感じさせる流れです。
あるいは、パソコンキーボードタッチにも、似たような「型」があります。
たとえば、キーボード上の「I」をたたくのに、そのたびごとに「人差し指」か「中指」かで迷っていたとしたらどうでしょう?
たぶん、いつまでたってもぎこちないキーボードタッチになるはずです。それでは、早くスムースに文字をうつことができないのは想像に難くないでしょう。その「I」は、右手の「中指」でたたくと決め、その「型」でもって量稽古をする。そのことで、指に流れでき、文字を早くうつことができていく。
そういうスムースな流れをつくりだすことが、ピアノのフレーズを弾くときの指づかいにもかかせないのです。
その「型」を一度指が覚えてしまうと、似たようなフレーズや違った鍵盤の位置でも、すっと再現できてしまう。つまり、ひとつの「型」は応用が効くのです。
それに、完成した「型」というのは、連続した動作の自然な流れを生み出しますから、フレーズからフレーズへ自然につなげることができる。ですから、ピアノの弾き手は、音楽をひじょうに心地よくつくりだしている感覚をもつことができます。
そんな演奏は、傍から見ていても危なげなく、安定している。ときに美しいとさえと感じられるものです。
譜読みするとき、指づかいが定まらないまま音を追っかけるより、指づかいと音を連動させて覚えていく方が 音楽の進行に流れが出てきます。
それは、あたかも自然な流れで優美に動作をする空手や歌舞伎の達人のようです。
あるいは、パソコンのキーボードをあざやかに打つ熟練技術者のよう。
ピアノ演奏においてそれが可能になるのも、「指づかいの型」があるからこそなんです。
「親指と人差し指の並んだ指で、こういうフレーズの繰り返しだな。」「このフレーズは上方の小指から降りてきて親指で終わる。その次は間髪いれずその親指をくぐらせながら薬指の音へ飛ぶんだったな」といった調子で、フレーズとフレーズをスムースな動作でつなげていけるのです。
ここで、さらに重要なことをつけ加えましょう。
指づかいの「型」を身につけると、さらにいいことがあります。
指づかいの「型」ができれば、音の粒を揃える練習、手を広げる練習、指くぐりの練習・・・等々、次の技術ステップにスムーズに移行できるのです。
これって、すごく大切じゃありませんか?
言い方をかえれば、「指づかいの型」の習得によって、技術上の弱点が見つけやすくなって、ステップアップを確実にすることができるのです。
では、今までのお話した、自分なりの指づかいを発見すること、そして「型」の重要性について、実例をみてより理解を深めてみましょう。
例:「モーツアルトソナタKV.545 第1楽章から」
■写真01: 全音楽譜出版 |
■写真02: BREITKOPF(ブライトコプフ) |
写真01は、全音楽譜出版。
写真02は、BREITKOPF(ブライトコプフ)の楽譜です。
同じ曲の同じフレーズでも、違った指づかいのアプローチをしていますね。
一見して、全音の方が単純な運指です。指くくりも少なく分かり易い。
ブライトコプフのほうは、最高音に3の指(強い指)が当てられていたり、黒鍵を使って指くぐりをさせるようになっています。
どちらの指づかい指示も、それなりの意図と根拠があります。
どちらを採用するかは、弾く人の指と相談です。
このフレーズの譜読みの時点で、仮に指づかいを無視して音だけをまず読むとします。
そうすると、とりあえず弾き始め、指が足りなくなったら適当なところで都合することになるでしょう。
これでは、音を覚えてきた段階になっても、指の動きにはムダが多くなっているはずです。その時々で、指が余ったり、足りなかったり…。
一方、このフレーズを、初めから指づかいにも気をつけて譜読みをするとどうでしょうか。全音の運指であれば、5の指まで上ったら下行形になるんだなと、指のポジションと音形を連動させて覚えることができます。つまり、フレーズ全体をひとつの「型」として理解することができるわけです。
言い換えると、指の運動感覚でフレーズをとらえていることにもなります。
これは、音を覚えると同時に指の運びも記憶しているという、ひじょうにお得な状態なのです。
さらに良いことには、「このフレーズなら、上行で盛り上げて下行は納まる感じかな」と強弱のニュアンスも自然とついてきますので、次のテクニック習得へのステップアップともなるのです。
こういった指づかいの「型」と「運動性」を意識した練習をし、フレーズにあった自分なりの指の型ができてこれば、そもそも譜読み自体が速くなるというのが、私の実感です。
以上、いかがでしたでしょうか。
『指づかいで、弾きやすさは変わる!』
これが、最後に伝えたい私からのメッセージです。
「適当に その場の感じで・・・」
もし今までそんなふうにおもっていたのであれば、今日からはぜひ指づかいにも注目してみてくださいね。
きっと、譜読みや楽曲習得が早くなり、演奏には良い流れと動きがでてくるに違いありません。
『ピアノとうた・ソルフェージュ』
[神奈川県横浜市都筑区]
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