知っていそうで意外と知らない、マル秘ピアノ・テク (全3回) 10年8月

知っていそうで意外と知らない、マル秘ピアノ・テク (全3回)
~これがAKI流!クラシックピアノへのアプローチだ!~

執筆者: 『ピアノ教室 21』主催 竹内 [東京都台東区]

第3回: レガート・ペダルってなに?
~動画で弾き方のコツをマスター~

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こんにちは。
ピアノ教室21』のAKI先生こと、竹内です。

前回の第2回は、Fur Elise(エリーゼのために)をとおして、ハーフ・ペダルについて詳しく紹介してきたワケですが、今回はもう一つのペダリングをご紹介します。


そのペダリングとは「レガート・ペダル」。


えっ、レガートって「指でするもんじゃないの?」と考えたあなた!
そんなあなたなら、これからするお話はきっと一読の価値はあります。

レガートには、指だけでなく、じつはペダルによるレガートもあるんです。


では、いったい「レガート・ペダル」とは何か?ですが。
それをお話する前に、まずはAKI先生の2つの動画を見比べていただきましょう。

着目すべきはペダルを踏むタイミングで、その「違い」をみつけてください。


※Fur Elise(エリーゼのために)冒頭部分 ペダル#1



※Fur Elise(エリーゼのために)冒頭部分 ペダル#2


どうでしょう。
「違い」わかりましたか?


【動画:ペダル#1】では、鍵盤を指で押すと同時に右足でペダルを踏んでます。

一方、【動画:ペダル#2】では、鍵盤を指で押した後で、右足でペダルを踏んでます。
繰り返しますが、、鍵盤を指で押した後です。
弾いた時にはペダルは踏んでおらず、音が聴こえてから初めて踏んでいるのです。

この後者(動画:ペダル#2)が、「レガート・ペダル」なのです。


このようなタイミングでペダルを踏むことで、ペダルでのレガートを可能にします。
「レガート・ペダル」が目指すものとは、音やフレーズのつながりが、クリアーさと同時になめらかにつながって聴こえるようにすること。
あるいは、ペダルを使わない指だけのレガート効果を、ペダルをつかって再現することともいえます。


この「レガート・ペダル」の使い方ですが、オクターブ奏法や3度、6度など、指だけで音をつなげにくい場合に便利に用いられます。

また、指で容易にレガートができるフレーズでも、ペダルでのレガート効果、ニュアンスを得たいため、あえて「レガート・ペダル」をつかうこともあります。

この「レガート・ペダル」を弾くときのちょっとしたコツですが、次の音を鳴らす前には、ペダルを踏むタイミングを打鍵より少しだけ遅らせるようにします。これは、先の動画でもご説明しましたね。

この感覚をつかみながら、音を連続させて弾くことができればすばらしい。

このタイミングが合わないと、音がにごったりします。ですから、やはり最後は、自分の耳を信じて、ペダル踏み変えのタイミングのコツを得とくしていただくしかないのです。


さて、ざっと「レガート・ペダル」についてお話をしたところで、いつものようにさらに学習・練習したい方は、以下の補講をひきつづきご覧ください。
「レガート・ペダル」をつかった時のピアノの構造の話をしながら、効果的な練習方法を提案しています。


ピアノは、ペダルを使ってさらに楽しみましょう!


補講 【レガート・ペダルの習得法について、さらに学びたい方は以下をどうぞ】


ここからは、レガート・ペダルの練習方法を通じて、そのときのピアノの構造やさらに突っ込んだ内容をお届けします。

※レガート・ペダル練習方法 【動画:#1 A minor scale 1 octave(イ短調音階 1オクターヴ)】



※【比較動画】レガート・ペダルじゃないペダリング 【動画:#2 A minor scale 1 octave(イ短調音階 1オクターヴ)】



練習例として、AKI先生がA minor scale(イ短調音階)を使ってレガート・ペダル練習方法動画:#1で模範演奏しています。


比較動画の【動画:#2】「レガートペダルじゃないペダルの演奏」とは、以下の2点について違いがあります。

1)ペダルを踏むタイミング
2)打鍵された各音の響き具合(残響)


1)は先述している通りです。

そして、2)は、もう一度動画を耳をすましてよ~く聴いて、そして見てください。

レガート・ペダルでは各音が比較的クリアーに響いているのに対して、もう一方のペダリングでは残響が多めだと思いませんか?

その理由は「倍音」にあるのですが、倍音については前回の「ハーフ・ペダルの記事で紹介していますので、そこをご参照ください。

ペダルを踏むタイミングが打鍵と同時の場合、つまり「レガートペダルじゃないペダル」は、※ダンパーが全ての弦から離れると同時に打鍵するワケですから、打鍵した音以外の倍音(ハーモニックス)までも同時に響いてしまうワケです。(いってみれば、お風呂場の反響状態。。。)

反対に、打鍵の後に(音が聴こえた後に)ペダルを踏んだ場合(これはレガート・ペダル)は、打鍵の瞬間、打鍵された弦のダンパーがのみが浮く(弦から離れる)ため、その(打鍵の)瞬間は倍音(ハーモニクス)は響かない状態のままです。

その後に初めてペダルを踏む(全ての弦からダンパーが離れる)ことで、残響も(倍音の少ない)比較的クリアーな響きになるという理屈です。


【ダンパーの解説】
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※「Damper Pedal(ダンパー・ペダル)」: Damp(ダンプ):もともとは「湿らせる・鈍らせる」などという意味。弦・太鼓の振動を止める、〈音を〉弱める、振幅・波動を減衰させるという意味で使われる。「Dampする装置」で「Damp-er(ダンパー)」。
ピアノには(高音部を除いては)ダンパーと呼ばれる消音装置が備え付けられていて、弾いていない時は常時、その消音装置が弦を上から押さえつけている状態になっています。ただし、いったん特定の鍵盤を押せば、叩いた弦からダンパーが浮いて(離れて)音が出るようになっています。
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ん、ちょっと構造的な説明でわかりにくかったでしょうか?

以下に、ダンパーの状態の写真をお見せしますので、画像を理解のヒントにしてみて下さいね。

【画像#1 ペダルを踏んでダンパーが全ての弦から離れた状態】
【画像#2 ペダルを踏んでおらず、打鍵された弦のダンパーのみが離れている状態】



それでは、レガート・ペダルについてだいたい理解できたところで、その練習方法をもう1つ紹介いたしましょう。



レガート・ペダル練習方法【動画:#1 A minor chord(イ短調和音)】
※和音を弾いた後、和音の音が聴こえた後にすぐにペダルを踏んでいる点に注目!

 


【比較動画】レガート・ペダルじゃないペダリング 【動画:#2 A minor chord(イ短調和音)】




さて、ではここから本格的な練習に入っていきますが、前回も例題としてつかったFur Elise(エリーゼのために)の冒頭部分でトライしてみます。

そして、前回のテーマだった「ハーフ・ペダル」も合わせ技でつかっていきますので、心してください。


※参考【第2回: ハーフペダルとふつうのペダルの違いってなに?】
https://www.piano-k.net/article/kikaku_1005_02_piano21.html



Fur Elise(エリーゼのために)冒頭モチーフの動画: レガート(&ハーフ)・ペダルの仕方 ※分かりやすくするために、ペダルを踏み込むタイミングをあえて大げさにしています。



ここで注目して頂きたいのは、ペダルは右手の第一音が聴こえた後に踏み込んでいるという点です。

もう何度もお伝えしていますが、これがレガート・ペダルです。

そして、ペダルは最後まで踏んでいなくて、残響が「ドライ」な程度まで踏み込んでいることにも注目です。

これがハーフ・ペダル。


それでは、冒頭部分をAKI先生の模範演奏で聴いてみましょう。

Fur Elise(エリーゼのために)冒頭部分の動画 レガート(&ハーフ)・ペダル


※前回の記事で紹介しているハーフ・ペダルも併用しています。ペダルは最後まで踏み込んでいないことに注目!

※動画ではゆっくり弾いていますが、右手の旋律の音が聴こえてから、ペダルを踏み替えているところに注目です。(=レガート・ペダル)。そして同時に、ハーフ・ペダルは音(残響)の響き具合によく耳を傾けながら(!)ペダルの踏み具合を調節して下さい。


練習する上で注意していただきたいのは、最初はゆっくり弾き、音響によ~く耳を澄ますことです。

【練習する上での注意すべき要点】

・「打鍵した後に(音が聴こえてから)ペダルを踏む(=レガート・ペダル)」

・「音響はドライな感じ(=ハーフ・ペダル)」



それでは、引き続き第1展開部へと進みます。

Fur Elise(エリーゼのために) 第1展開部の動画 レガート&ハーフ・ペダル




ここでも同様に、ペダルは常に打鍵した(音が聴こえた)後に、踏み込んでいることに注目してくださいね(=レガートペダル)。


次は第二展開部。

Fur Elise(エリーゼのために) 第2展開部の動画 レガート&ハーフ・ペダル



あなたの耳と目をフル活動させて、よ~く観察して下さい。
演奏中、ペダルが上がる度に次の新たな音を弾いてませんか?

次の音を打鍵すると同時にペダルを上げる(踏み替える)ということは、それまでペダルによって反響(残響)していた前の音をいったん消すという作業なのです。

その作業を、次の新たな音を弾くと同時に行っているのがミソです。

こういった音を消す作業と新たにレガート・ペダルによって音を加えていく手と足の連鎖は、まるでちょっとタイミングのズレたシーソーのようです。

んー、レガート・ペダルって、なかなか奥が深い・・・


それでは、最後にAKI先生のレガート&ハーフ・ペダルを見ながら、Fur Elise(エリーゼのために)を最初から最後まで通して締めくくります。

言葉での説明が多くなりましたが、やはりそのニュアンスをあなたの聴覚、センスで感じてほしいとおもいます。

音楽の本質は、言葉ではなく「音」ですからね!


Fur Elise(エリーゼのために) 全楽章の動画 AKI先生演奏 レガート&ハーフ・ペダル





以上、全3回にわたってずっとお付き合いくださり、ありがとうございました。

次は、また別のテーマでお会いすることにいたしましょう。
それまで、お元気で!


AKI先生より

 


今回の特集記事執筆者 

ピアノ教室 21』 竹内 [東京都台東区]