指使いで劇的に変わるピアノ上達法 :お子さん編 

お子さんが、いっしょうけんめい練習しているけど、指使いや表現があと一歩のところで上手くいかず、いきづまっている・・・・。そんな時は、保護者の方に指使いの基本的な知識が少しあれば、あんがい楽に突破できるかもしれません。今回は、お子さん編です。



指使いで劇的に変わるピアノ上達法 :お子さん編





今回のメルマガ執筆者 16年4月



エムジック音楽教室  宇野智子 [千葉県市川市]






 

 平成28年熊本地震で被災された皆様、ならびにそのご家族に心よりお見舞い申し上げます。

 さて、前回のメルマガ『デキる生徒さんにヒアリングした効果的な練習方法』はいかがでしたか?

※ 『デキる生徒さんにヒアリングした効果的なピアノ練習方法:  お子さん編
※ 『デキる生徒さんにヒアリングした効果的なピアノ練習方法:  大人編


今回は、ピアノのテクニック部分に焦点を当てた内容をお送りします。

 今回の「お子さん編」では、練習しても指使いや表現があと一歩で、なかなか曲が合格にならないお子さんの保護者さんや、弾きづらそうに練習しているお子さんの保護者さんへ向けた内容です。演奏しやすく正しい指使いを習得して、曲を弾きこなせるようになりましょう。




楽譜のなかの暗号

 楽譜には、音符だけでなく音楽を奏でるために必要な情報が多く記入されています。
譜例を見てみましょう。

譜例:ウィリアム・ギロック「ビギナーのためのピアノ小曲集 はじめてのギロック」
《小さな羊飼い》第1 - 4小節


 初歩レベルの比較的易しい曲ですが、たった4小節のなかにさまざまなインフォメーションが含まれています。

 音符は、音高(音の高さ)と音価(音の長さ)をあらわし、また音符の連続によって旋律とリズムを作り出しますが、楽譜から読み取れる情報はそれだけではありません。メゾフォルテ(mf)とピアノ(p)の記号が、演奏するべき大きさや強さをあらわしています。さらにこの曲にはクレッシェンドとデクレッシェンドが書かれているので、ただ大きく小さく演奏するだけでなく、「だんだん強く、だんだん弱く」というニュアンスを求められていることが分かります。

 そして、音符の上下には※指番号があります。右手で弾く音はたくさんあるにも関わらず、指番号は1しか書いていません。ですが、1の指から順番に、素直に音を辿っていけば演奏することができます。最初の音を1の指で弾くことが肝心なのです。

※(注) 指番号とは、左右ともに親指→小指の順に1,2,3,4,5と振られた番号のことをさします。

 また、小さなお子さんは音符を追うことだけに一生懸命になってしまいますが、五線の端には音部記号、拍子記号があります。これは、本来なら譜読みをする時、一番最初に見ておかなければならない重要な部分です。

 レッスンが進むと、ここにシャープやフラットといった調号がつく曲も登場します。読み飛ばすくせがつかないよう、小さなうちから心がけることが必要です。

 私は、読譜能力を身につけることは、外国語を習得することと同じだと思っています。言語と同じように音楽もまた、さまざまな調号や臨時記号、発想記号によって、方言や派生語、言葉の調子などが示されているのです。なので、なかなか音符が読めるようにならない、というお悩みをもつ保護者の方には「外国語を習うことと同じなので小さい子どもにとっては未知のことが多く、習得に個人差があるのは当たり前」であることをお伝えするようにしています。また、生徒さんご本人にも音部記号や拍子の大切さを、それぞれの年齢に合った平易な言葉でことあるごとに(鬱陶しいくらい?)伝えるようにしています。

 このように、楽譜には音符だけでなく発想記号、速度記号などさまざまな情報が詰め込まれています。そんなにたくさんのこと、同時に見られないよ!という生徒さんもなかにはいらっしゃいます。ですが、せっかく頭のやわらかい小さなうちからピアノに親しめるのです。基本的なことからコツコツ覚えていってくれたら、嬉しいと思っています。

 習得すると役立つ基本的な指使い(運指)は次の三つです。


基本的な指使いその1. トンネル




 この動画のように、1の指を他の指の下へ通す技法のことを「トンネル」と呼んでいます。これは私独自の造語ではなく、いくつかの教本でそのように説明がされているので、ご覧になった方もいらっしゃると思います。指くぐりともいわれます。

 左右とも、上行と下行で「トンネル」をおこなうことができます。このテクニックにより、長いパッセージを途切れずに、そして快適に演奏できるようになります。


基本的な指使いその2. 黒鍵




 黒鍵で1の指を避ける理由は、動画の手の動きからお分かりいただけると思います。1の指で黒鍵を弾くためには、その指の構造上、手のひら全体を黒鍵側(ピアノの奥)へ動かす必要があります。

 ですが、黒鍵の上に乗ったポジションから白鍵を弾くのは、効率があまりよくありません。そのため、黒鍵は可能な限り1の指を避けるというのが常道です。ただし、曲によってはどうしても黒鍵で1で弾かざるを得ない部分も多々あります。あくまで運指における基本的な考え方として覚えておくとよいと思います。


基本的な指使いその3. 和音




 和音は、一番下の音と一番上の音を1と5の指(左右でそれぞれの指は反転します)で押さえるものがほとんどです。ですが、上下にはさまれた真ん中の音をどの指で押さえるかは、一つの法則によって使い分ける必要があります。

 動画をご覧下さい。右手の場合、このように、1の指と5の指から真ん中の音の距離が等しい場合と、1の指に対して真ん中の音が5の指に近い場合は、3の指を用います。
反対に、真ん中の音からみて1の指が近く5の指が遠い場合は、2の指を用いるのが一般的です。左手で和音を弾く場合も同様に、5の指に近い音は3の指で、1の指に近い音は2の指で弾きます。もちろん、先に挙げた黒鍵の法則と同じように、難易度の高い曲では例外が多くあります。

 これらは、運指の基本となるテクニックです。この基礎さえ身につければ、小さなお子さんでも、指使いの振られていない楽譜を自分なりに弾きこなすことが可能になります。


10本の指を生かし、無理なく演奏するために

 指使いを教える時には、なぜその指使いを習得する必要があるのか、その理由を理解してもらうように心がけています。

 指使いの利便性を分からないまま、ただやみくもに「こうしなさい」という頭ごなしの指示だけで練習するのは、丸暗記に過ぎないと思うからです。ただ暗記をするだけでは今現在取り組んでいる一曲しか弾きこなすことはできません。ですが、指使いを「テクニック」として習得すれば、そのテクニックをさまざまな曲に応用することができます。

 一回で技術を身につけるのは難しいですが、その指使いが出てくる度に何度も説明をしていくうちに、生徒さんの方からそうした指使いの根拠(連続した和音が弾きやすくなるから、半音階を速く弾けるから)を答えてくれるようになります。

 もちろん、この基本的なテクニックに多くの例外があることもなるべく話すようにしています。近現代の曲で使われる和音の多くは、5と4の指をひねくり回して押さえなければならないところが多くありますし、シャープやフラットが多い曲であれば、1の指で黒鍵を弾かざるを得ない部分も出てきます。ショパンやドビュッシーなど人気の作曲家による憧れの曲でそういった壁に当たる生徒さんもいらっしゃいます。

 ですが、基礎を理屈から理解していれば応用は可能です。そうしたテクニックを積み重ね、レッスン以外にも自分の弾きたい曲を自由に選んで取り組む‥‥‥そんな風にピアノを楽しむ生徒さんが一人でも増えてくれたら講師冥利につきると思っています。

 しかし、大人の指使いに関しては、基礎から積み重ねるという正攻法でない方が成功するケースもあります。次回のメルマガでは、大人がピアノを始める、あるいは再開する上での指使いの問題について考えてみようと思います。


エムジック音楽教室  宇野智子 [千葉県市川市]



 







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エムジック音楽教室  [千葉県市川市]] のご案内

 初めまして、宇野智子と申します。

 日本大学芸術学部音楽学科に入学し、学生時代は写真学科や映画学科など、クリエイティブな友人と切磋琢磨して勉強いたしました。大学院は博士課程を道半ばで中退。当時はすったもんだがありましたが、挫折の分だけ、音楽の美しさや奥深さ、学ぶことの素晴らしさを改めて知ることができたように思います。

 ピアノを教えるだけでなく、ライターとしても活動、『それぞれに合わせた適切な言葉で適切な指導を』が最近掲げている目標です。

 オンラインレッスンのほか、音大受験に関してのご相談、レポートや小論文の指導も受けつけております。


エムジック音楽教室 宇野智子










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